【全ての人類を動かす】〜神話の力〜

『神話の力』はジョセフ・キャンベルによる古今東西の神話から導き出された法則を示唆する本です。

ジョセフ・キャンベルは神話の法則(ヒーローズ・ジャーニー)の生みの親で、「スターウォーズ」や「シンデレラ」「ワンピース」「ドランゴンボール」など世界中でヒットする作品はすべてこの法則に基づいて作られています。

本書は直接、神話の法則の構成についての著書ではありませんが、人類がなぜ神話の法則を作ったのか、そして生きる意味とはなにかを哲学的に捉えることができる一冊です。

神話について対話式で読みやすい

本書は通常の本のような一人称のライティングではありません。

生徒と先生という対話式になっており、生徒役が先生役のジョセフ・キャンベルに質問してそれに答えるというもの。

「嫌われる勇気」の哲人と青年といったらわかりやすいでしょうか。

あの青年まで無知なわけではありませんが、対話式で進んでいくので2人の息の掛け合いも読みどころ。

最初の方は神話の内容についてというよりもジョセフ・キャンベルがなぜ神話を研究するに至ったか、現在の生活の中でどのように神話が根付いているのかが語られています。

中盤以降に世界各国の神話の法則の話になっていき、生きる意味まで考察する深い内容に入っていきます。

ただ、神話を考察するだけでなく、私たちの祖先の考え方や人類の歴史を知ることで自分の人生や、生きる意味を問われます。

時代や民族を超えて人が作る神話には共通点がある

昔は今と違ってインターネットもないし、科学も発展していません。

ですので、雨が降らなければ神様が悪いせいだとか、不作だと生贄を神に差し出したりだとか、人間は非科学的なことを拠り所にしていました。

その際に作られた神話にはストーリーや存在し、ひとつの神話に色々なキャラクターが登場します。

例えば、ギリシャ神話なら

など、上記の神以外にも膨大な神々が登場します。

それぞれの神には役割があり、哲学的な意味もあれば都合よく作られた神、いい神や悪い神まで性格も様々。

改めて、昔の人々の想像力には驚かされます。

すごいのが、それがギリシャ神話だけの話ではなくて、世界各国の神話にも共通しているということです。

同じ大陸のヨーロッパで伝わる神話なら似ていてもおかしくはないのですが、極東の島国である日本に伝わる神話も共通点があるのです。

考えてみれば、桃太郎の話だって主人公が仲間を従えて強敵を倒して宝を持ち帰るというストーリーは世界中の物語で用いられる鉄板のストーリーですよね。

人が生きていく、本質的な思考は国境を超えて共通しているということだと思います。

神話は人類の生の歴史も負の歴史も教えてくれる

神話の中で語られる、哲学やその当時の人々の信念はとても興味深いです。

中でも、正義や愛については今の時代の人々が忘れかかけている大事なことを思いださせてくれます。

「信じるものは救われる」とはよく言いますが、昔から人は信じることがあると強くなれるものだったのですね。

今みたいにインターネットも情報も無い時代から尚更でしょう。

その想像力は果てしなくて、キリストの生い立ちや蘇りもすごいですが、ブッタに関しては母親の脇腹から生まれてくる設定ですし、キリストも処女から生まれます。

神とは神々しい存在であるすべてを超越した存在である必要があったのでしょうね。

ただ、神話に出てくる神々は良い神様ばかりではなく残虐な神やトリックスターと呼ばれる神様も出てきます。

すごいのは、村でお祭りをした後に生贄にされることが決まっていたり、むちゃくちゃな儀式が行われていていたりと、誰かの都合の良いように誕生した神様もたくさんいます。

ナイジェリアのトリックスター神、エドゥシーなど人を困らすことで至福の喜びを感じるいたずらな神様もいます。

当時のヨーロッパは略奪を繰り返して、共通の敵が存在したのでそれらが神話の影響していることも興味深い点と言えるでしょう。

それらを紐解いていくことにより、その当時の人々の思想も明らかになります。

神話は人類の歴史そのものです。

神話は愛も語る

人類の歴史を振り返ると、ほとんどが戦争を略奪の連続です。

人を殺してはいけない、という道徳が浸透し始めたのも人類の歴史の中でもごくごく近年のお話。

ですので、神話の話は戦争の意味は生の意味について語られている話が多いです。

ただ、狩猟の時代から罪のない動物を殺して、それを食べるということに儀式を用いたり、動物に神話を作ったりすることで人の心は救われていたという事実もあります。

それは狩猟の時代から農耕の時代になっても続き、自然を犠牲にして人間は生きていくという事実に昔の人々は祈りを捧げました。

その神話の中には深い慈悲を感じます。

多くの神話の中では神=男性像が多いですが、実は女性を神とする神話も多く存在します。

ずっと昔の神話では女性の神が多く、その後キリストやブッタに代表される男性像の神が多くなりました。

これは、当時の社会情勢も関係しています。

今現在の社会で見ると、男性中心の社会から女性も活躍する社会へと変わってきましたので、人々の思想も変化してきた証拠でしょう。

ただ、昔から人類はどちらかというと男性を神とし、そこに権力や富を連想してきました。

元を辿ると、人間は女性の中で命を宿ったときは男にも女にもなれます。

そこから性別が分かれるわけですが、男性と女性の愛のあり方、結婚観も神話の中で深く語られています。

民族によって一夫多妻制の民族などもありますし、一夫一婦制の民族もあったので、いろいろな考え方が存在します。

そもそも昔の人たちは、恋愛などなく物心ついた時に結婚相手が決められていました。

王族はもっと厳しかったのですが、その当時から情事は結構あったみたいです。

人間の情欲は、時には幸福をもたらし、時には破滅をもたらします。

それは人類の永遠のテーマともいえるでしょう。

ジョセフ・キャンベルは本書の中で、結婚と間について吟遊詩人の愛の心理から宗教的な考え方まで考察しており、結婚と情事は違うと断言しました。

愛の力の強さ、そしてその苦しみについてもその真理を神話から学べます。

神話の力 まとめ

本書は各国の神話について、哲学的に学べる一冊です。宗教などについても詳しくなれるし、スピリチュアルが好きな人にもおすすめです。人はなぜ神を作ったのか、人の思想や心理についても幅広い知識が身につきます。

そして、文明の歴史を知ることで今、自分が生きる意味や生きている意味も改めて考えさせられます。

家にいながら、歴史といろんな神と出会える、そんな一冊。

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kohei okasuji
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