悪の教典を読んでみて、衝撃だったので感想を書きました!

小説「悪の教典」を読みました。

衝撃的な内容だったので、ブログで紹介したいと思います。

この作品は貴志祐介による一冊。サイコキラーやサイコパスが主題になっている一冊です。

物語は、とある公立高校で、教師と生徒の物語。序盤は良くある高校生活の内容で、教師の裏側を描いてはいるものの、実際にありそうな日常を描いています。

しかし中盤から一気に、殺戮を繰り返すバイオレンスな内容へと一変し(その布石はあるのだが)後半では、もはや収集不可能な、大量殺人のお話になっています。

僕は、小説を読むときに、作者の思惑や何と伝えたいのかといった、裏側を見てしまうのですが、この小説を通じて作者が伝えたかったことは、最終的に犯行に及んだ教師は逮捕されることから、世の中にサイコパスという人格を問うための作品だったのではないかと思います。

貴志祐介は青の炎(URL)という作品を過去に読んだことがあり、これも殺人を題材にしたミステリー小説でしたが、人の内面を美しく描いており、殺人と良心の間の葛藤を上手く描いていた作品でした。

しかし、この悪の経典は良心など一切なく、ひたすら殺戮を繰り返すサイコな人物のお話。

読む前はこの作品の前評判がとてもバイオレンスで残虐な作品という呼び声が多かったので読むのを躊躇いましたが、読みだすと一気に読み終えました。小説ですので、架空のお話なのはわかっているという前提ですが、途中読んでいて、殺人を繰り返す主人公の蓮実(はすみ)を応援している読者の自分もいました。

とても念密に殺人犯の思考を文章に落とし込み、繊細な物語の組立方、犯行に及ぶ同期、そして生徒との関わり合いが、リアルに伝わってきて、実際にそこにいるような、この学校に関わっているような気持ちになりました。

では、大きく作品を通じて感じた3つを紹介します。

1.サイコパス(社会不適合)は意外に短かにいるのでは

この作品は表顔は学校で生徒に人気があり、教師たちからの信頼も厚い蓮実教諭が、実はサイコパスだったというところが、核です。

生徒の人気を確率するために、日々行っている行動や教師たちの中で人格者でいるための立ち振る舞いなど、実は緻密に計算されており、自己の欲求を満たすためのゲームだったということです。

「人は誰でもその気になれば目的を達成できる」という主人公の狂気に満ちた持論は、確かにそうだと思うところもあり、数々の殺人や犯行を繰り返してきた緻密な計画性からは学ぶべき点も多くあります。

そこまで、考えて行動に移せる実行力があれば、確実に結果を残せるでしょう。事実、この物語の中で蓮実教諭はラストの致命的なミスをのぞいて、全て自分の計画を完璧に実行しています。

この物語で主題として扱われていることが殺人ですので、普段の生活にはリンクしませんが、例えば会社で出世争いや、権力争い、異性もモテたりするといった、目的は実際にありますよね。

前の会社に、インストラクターという立場なのに、新入社員と付き合い出したサイコな人物がいましたが、この物語の蓮実教諭のように、自分の立場を利用して計算して実行に移していくタイプでした。

良く言えば、行動力があるのですが、実際に一緒の会社にいた当事者としては目に余るものがあり、こういったタイプの人間は実際の社会にもいるな、と思いながら読みましたね。

2.なぜが、途中で応援したくなるような書き方がすごい

悪の経典は、実は途中まで上手く話が進み、いわゆるサイコ的な話というか、生徒との禁断の恋などがあり、どちらかというと、日常を上手く生きていくための思考力のお手本となるような内容です。

しかし、途中で計画が頓挫し、苦肉の策で実行に移すを得なかった蓮実の行動が、自分の担任する生徒を皆殺しにするという突飛な発想でした。

悪の経典のレヴューにも書き込まれていますが、途中で魅力的な登場人物がいとも簡単に次々と殺されていくのは残念です。しかも、人の思考が止まる瞬間まで繊細に描写されていて、リアリティのある書き方でした。

通常、人殺しというと反社会的で、漫画やアニメ、映画などのフィクションでのみ許される行動です。

この悪の教典のすごいところは、序盤はごくありふれた日常生活の人々の生活から描かれているので、道徳的な考えが芽生えるところ。ですので、最初蓮実の行動は理解できませんでした。

さらに、途中で殺人犯に変わるまで、物語の中で蓮実教授は明らかに正義のヒーロー的な役割があり、小説に登場する主人公としても、作中で登場する生徒たちの先生役としても完璧なものです。おかしな性癖はありますが。

最終的に自分の担任するクラスの生徒約40人を次々と仕留めていくのですが、途中で蓮実教諭に協力してしまいそうな、応援してしまいたくなるような書き方が見事です。

読みながら、蓮実教諭に感情が入ってしまいました。当の蓮実教諭には感情などない、サイコキラーなのですが。

行動を移し、目的を達成しようとする人物と、それに反抗し生き延びようとする生徒との攻防がまたリアルで、邪魔されるたびに、この先どうなるのか、と興味をそそられながら読み進みました。

3.ギャップが人を引きつけるという法則

この作品の題材はサイコパスを扱っているところ。

サイコパスとは社会不適合者と訳することができますが、それが学校の人気教諭という設定が大きなギャップを生み出しています。

人の命を平然と持て余し、自らの利得でした物事を考えない人物、それがサイコパス。

そして、普通の人よりもあきらかに頭脳指数が高いと思われる人物設定。

生徒の憧れの的という人物の仮面を被った殺人犯の思考。

主人公以外、人間味のある(当然だが)登場人物のおかげで、主人公の鬼畜さがありありと滲み出ています。

さらに人気教師の裏の顔がサイコパスという設定以外にも、「そこまでするか」というシーンが数多く散りばめられており。話の中に伏線も多く存在するので、面白く読めます。

悪行を止めに行く正義の主人公が登場するのかと思わせつつ、あっけなくやられていく様子は、いい意味で裏切られるので読んでいて飽きませんでした。

そういった社会的に道徳に反している内容を描いているにも関わらず、最後まで読者を飽きさせず読ませる技術は、いくつも読者を飽きさせないために考えられた内容だからでしょう。

まとめ

賛否両論を世間に巻き起こした本作ですが、僕は良い作品だと思います。

それは決してサイコパスが良い、ということではなく、作品として人を楽しませるという意味で上下巻に渡る長編を一気に読み進めたという事実からも、エンターテイメントとして優れているということです。

作中に登場する人物も特徴的に魅力的な人物が多く、感情移入してしまいます。

ラストに全ての犯行が覆され、上手くいかないという終幕の仕方は作者からのメッセージなのかもしれません。

そして、読んだ人にしか分かりませんが、残虐な話の中でも人が人に惹かれてしまうと、自分の都合の言い方に解釈してしまうのもだとも感じました。

この作品の映画版も、かなり問題作として話題になりましたが、まだ見ていないので、時間があればまた見てみたいと思います。

色々な意味で考えさせられる作品ですので、気になる人はぜひ読んでみてください。

貴志祐介ワールドにどっぷりと浸かれることができ、自分が人の心理を見抜くプロになったかのように思える一冊です。