『効率を超える力』はモートン・ハンセン/楠木 建(監訳・解説)による「賢く働く」をテーマにしたビジネス書です。
従来、日本のみならず海外でも長時間働き、プライベートを犠牲にして働くことが美徳とされ、それが成果を上げる最善の方法だと信じられていきました。
しかし、近年その考え方は覆され日本でも「働きかた改革」が推進されています。
時代が「新しい働き方」へとシフトして来ているといえるでしょう。
本書はその先駆けともいえる内容です。
元々、大手のコンサルティングファームに勤めていた著者は、残業は当たり前、休日を仕事に費やすという生活を送っていました。
もちろん、それは仕事で成果を上げ昇進するため。
しかし、彼の同僚に定時で仕事を切り上げ、休日も仕事をしていないのに関わらずに社内でもトップの成績を上げ続ける「ナタリー」という女性が現れます。
彼女の存在がきっかけで著者は従来の自分の働き方に疑問を感じると同時に、賢く働き、効率よく仕事で結果を上げるための研究を始めます。
本書では、様々な事例を中心に失敗と成功例を中心に『何をすべきか』のヒントを見つけることができます。
この記事では、本書を読んで僕が印象に残り、実践していきたいと感じた3つのTODOをご紹介いたします。
1.することを減らして徹底的に目的にこだわる
多くの人が、必要以上の仕事を抱えて毎日を忙しく過ごしています。
しかし、それは逆にパフォーマンスを下げている状態。
こんな実話があります。ある2組の探検隊が人類としてはじめて南極点に到達するために、競い合っていました。
結果から先にお伝えすると、一方の探検隊は全滅、一方の探検隊は南極点に到達し目標を達成しました。
両隊が投じた資金や資材には、大きな差がありました。船の大きさは、187フィートと128フィート、予算は4万ポンドと2万ポンド。隊員数は65人と19人。驚くべきことに前者が全滅した探検隊、後者が到達した探検隊です。
前者の探検隊は予算をフルに活用し、予想されるリスクに備え、物資の運搬には5種類の輸送手段を用いてどれかが失敗しても常にバックップがありました。
後者の探検隊は物資の輸送は犬のみ。もしも犬が失敗したら全滅は確定。
しかし、犬は失敗することはありませんでした。むしろ立派に仕事を成し遂げたのです。
なぜか?
それは後者の探検隊は徹底的に犬だけにこだわったことにあります。過酷な環境の中でも犬を駆って走らせる方法やそりを操作する方法を徹底し、優秀な犬を集めることにこだわりました。
その結果、前者の探検隊は5つの異なる輸送手段の準備に追われ、結果的に探検隊の調整に四苦八苦することになります。
後者の探検隊は1種類の輸送手段にこだわったことで、氷の大地を速いスピードで横断することに成功しました。
両者の決定的な違いは
「することを減らして、こだわる」
ことです。
これは現代社会の働き方にも言えることです。
”たいていの人はこだわりを軽んじ、リスクが高いとか、心身をすり減らすだけだなどと考えていることが多い。しかし、こだわりは生産的な力となることともある。”
することを減らし、徹底的に目的にこだわることで、仕事の成果も出やすくなります。
以下は重点化と努力の業績の関係にグラフです。
私たちは、無駄に仕事を増やしたり上司の無理な注文により、やることを増やし過ぎている傾向があります。
突きつけると仕事の目的は、シンプルであるのに、無理に複雑化させている傾向があるのではないでしょうか。
やることを減らして、徹底的に目標達成にこだわることが「賢い働き方」と言えます。
2.「情熱×目的」Pの2乗で働く
情熱(Passion)と目的(Purpose)を一致させ、強力なエンジンとすることが賢い働き方。
なぜなら、どちから片方だけに偏っていても偏った結果しか得ることができないからです。
よく「仕事には情熱が必要」といいますが、情熱だけでは結果を残すことができません。
「目的」を持ってそこに「情熱」を注げるかが鍵となります。
この情熱と目的が一致する仕事が集中力を高めさせて業績も高めさせます。
※図がチープですみません
著者は言います。
”Pの2乗の本当の魔法とは何だろう? それは仕事につぎ込むエネルギーをさらに与えてくれることだ。「もっと一生懸命に働く」パラダイムのように労働時間を延ばすのではなく、労働時間1時間当たりのエネルギーを増やすのである。これこそ賢い働き方だ。”
どんな業種、どんな仕事でも情熱を持ち目的を持って仕事をしている人は業績が高いという調査結果も出ています。
自分の仕事が情熱と目的にPの2乗を兼ね備えているか、賢く働くために今1度見直してみる価値はあるのではないでしょうか。
3.1個のプロジェクトに全力投球する
これは『1.することを減らして徹底的に目的にこだわる』と似てますが、ここでは『共通目標』がテーマです。
例えば2つの異なる部署が社内にあったとします。
コンサルティング部署と経理部署だっとして、互いに部署内での目標に躍起になっていて、協力体制が整っていないと、会社全体の業績は落ちます。
たとえ違う部署間だったとしても、ひとつのプロジェクトに向かって互いに協力し合うことが、目標達成の近道。
有名な例を挙げると、ケネディ大統領の「月面着陸」が挙げられます。
ケネディ大統領は1961年の演説で「今後10年以内に、人類を月面に到着させる」という夢を語りました。
これこそが人類共通の目的と言えるでしょう。
この計画に携わった人は40万人以上。ロケットやシャトルの機体を作る人、宇宙服を作る人などなどが計画を達成するためにひとつのプロジェクトに全力投球した結果が人類を月に到着させました。
ですので、「他のチームとは一緒に仕事をしない」という考えは捨てて、ひとつの集合体として目標に全力投球することが「賢い働き方」と言えます。
ただし、「他のチームと一緒に仕事をし過ぎること」は帰って逆効果になるので、互いの役割を明確にしておく必要があります。
まとめ
『効率を超える力』から学んだ3つのTODOをご紹介しました。
これ以外にも「成長サイクルを巧みに回す」方法や、今そこにある仕事を「再設計」する方法など、これからの新たな働き方のキーとなる考え方が網羅的に解説されています。
読み終えると
『そもそも何をするべきか』
のヒントになること間違いなしの一冊です。
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